vol.232 変形労働時間制
~忙しい時期は長く、暇な時期は短く働く制度~
労働法では、1日8時間、1週間40時間の
法定労働時間が定められており、
原則この時間を超えて労働させることができません。
法定労働時間を超えて労働させるには、
『時間外・休日労働に関する協定届』(36協定)を
必ず締結しなくてはいけません。
ただし、当初から「月末月初は忙しく、月の途中は閑散期である」
「夏の季節は忙しいが、冬はそんなに忙しくない」など
業務量に変動があることがわかっている場合に、
一定期間の労働時間を平均化することで、
繁閑に応じて労働時間を配分し、
労働時間を法定内に収めることを目的
としたのが変形労働時間制です。
今回はいくつかある変形労働時間制について
確認をしていきます。
--≪目次≫-------
□ Q&A
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■ 変形労働時間制とは
変形労働時間制とは、会社の所定労働時間(働くべき時間)を
繁忙期は長く、閑散期には短く設定し
平均して法定労働時間を超えないようにする制度です。
【メリット】
○業務量変動への柔軟な対応による生産性向上と残業代削減
繁忙期には労働者の労働時間を増やし、
閑散期には労働時間を減らすことが可能なため
業務量の変動に柔軟に対応し、
生産性の向上を図ることができます。
さらに、繁忙期と閑散期で労働時間を調整することで、
年間を通じての残業代削減にもつながります。
○従業員の健康保護と会社全体のモチベーションアップ
スケジュールを調整できるため、
従業員の体調不良や過労の防止にも効果的な制度です。
従業員に閑散期の短時間労働や休暇の取得を推進して、
休暇予定も立てやすくなります。
これにより、ワークライフバランスの維持に役立ちます。
【デメリット】
●勤怠管理と給与計算の複雑さ
変形労働時間制は
日や週ごとに異なる所定労働時間を設定するため、
勤怠管理や給与計算が複雑になり、
担当者の負担が増えるという点があります。
●制度導入への課題
変形労働時間制を導入する際は、
就業規則の変更や、労使協定の締結が必要になります。
変形労働時間制のメリット、デメリットを把握して、
業務内容とあっている、導入したほうがよい、というのであれば
導入を検討してみてはいかがでしょうか。
■ 変形労働時間制の種類
変形労働時間制は、4つの種類に分類されます。
(1) 1か月単位の変形労働時間制 (労働基準法第32条の2)
1か月以内の期間の労働時間を平均したとき
1週間あたりの労働時間が
40時間(特例事業は44時間)以内であれば、
1日・1週の法定労働時間を超えた労働日数や
労働時間を設定することができる制度です。
月末や月初が忙しく、月中との繁閑の差が
顕著な事業に適しています。
(2) 1年単位の変形労働時間制 (労働基準法第32条の4)
1か月を超える1年以内の期間において、平均して
1週間あたりの労働時間が40時間(特例事業も同様)を
超えないことを条件に、労働時間の配分を行う制度です。
ただし、1年間の労働日数は280日、
1日の労働時間は10時間まで、1週間の労働時間は52時間まで
という制限があります。
労働日や1日あたりの労働時間に関しては、
様々な限度や特例が設けられているため、事前に確認が必要です。
季節による業務の繁閑の差が大きな事業に適しています。
(3) 1週間単位の変形労働時間制 (労働基準法第32条の5)
事業場における従業員数が常時30人未満の
小売や旅館、料理店、飲食店の各事業において、
1週間単位で労働時間や休日を調整できる制度です。
1週間の総労働時間が40時間を超えない範囲で
1日の所定労働時間を最大10時間まで設定することができます。
各日の労働時間は、少なくとも1週間前には
書面で通知することが求められます。
日ごとの繁閑の差が大きく、
事前予測が難しい事業に適しています。
(4) フレックスタイム制(労働基準法第32条の3)
1日のうち「コアタイム」と呼ばれる必須の出勤時間を設定し、
それ以外の部分で一定期間内に定められた総労働時間の枠内で、
労働者が始業及び終業時間を決定できる制度です。
業務の円滑な進行と従業員の私生活の充実及び
利便性を両立させることを目指します。
子育て中の社員が多い会社や、
通勤時間帯に混雑することが多い都市部の会社に適しています。
■ 変形労働時間制の採用手続き
変形労働時間制の採用するにあたり、
就業規則や労使協定により具体的に下記の内容を定める
必要があります。
・対象労働者の範囲
・変形期間
・変形期間の起算日
・変形期間内の労働時間数
・労働日の始業、終業時刻
・有効期間(労使協定の場合のみ)
なお、1か月単位の変形労働時間制は、就業規則もしくは労使協定の
どちらかを締結すれば変形労働時間制を採用できますが、
それ以外の、1年単位、1週間単位、フレックスタイム制は
就業規則に定めるだけでなく、労使協定の締結も必要となり、
1年単位と1週間単位、1か月超のフレックスタイム制は
労働基準監督署へ労使協定を届け出する必要があります。
■ 時間外労働時間数の計算の方法
変形労働時間制を採用した場合の
時間外労働時間数の計算方法について比較して確認しましょう。
①から順番に計算していきます。
【一般的な労働時間の場合】
①1日・・・・8時間を超えて労働した時間
②1週間・・・40時間を超えて労働した時間
【1か月単位の変形労働時間制】
①1日・・・・1日8時間を超える時間を定めた日はそれを超えた時間
それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
②1週間・・・1週40時間を超える時間を定めた週はそれを超えた時間
それ以外の週は40時間を超えて労働した時間
(①1日ですでに時間外労働として計算した時間を除く)
③対象期間・・対象期間の法定総枠数
(40時間×対象期間の暦日数÷7日)を超えて労働した時間
(①1日、②1週間ですでに時間外労働として計算した時間を除く)
【1年単位の変形労働時間制】
①1日・・・・1日8時間を超える時間を定めた日はそれを超えた時間
それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
※ただし定められるのは1日10時間が限度
②1週間・・・1週40時間を超える時間を定めた週はそれを超えた時間
それ以外の週は40時間を超えて労働した時間
(①1日ですでに時間外労働として計算した時間を除く)
※ただし1週52時間が限度
③対象期間・・対象期間の法定総枠数
(40時間×対象期間の暦日数÷7日)を超えて労働した時間
(①1日、②1週間ですでに時間外労働として計算した時間を除く)
※ただし対象期間中に
週48時間を超える所定労働時間を設定するのは連続3週間以内
【1週間単位の変形労働時間制】
①1日・・・・1日8時間を超える時間を定めた日はそれを超えた時間
それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
②1週間・・・週40時間を超えて労働した時間
(①1日ですでに時間外労働として計算した時間を除く)
【フレックスタイム制】
清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が
時間外労働となる。
①法定労働時間の総枠数の計算
清算期間における法定労働時間の総枠数
=1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間の暦日数÷7日
そのため1日、1週間といった単位での
時間外労働の計上はありません。
■ 変形労働時間制の適用除外者と特別な配慮を要する者
(1)適用除外者
以下の者は変形労働時間制の適用から除外されます。
・年少者(18歳未満)
・妊産婦で適用除外を請求したもの
(2)特別な配慮を要する者
以下の者については、
それらの者が必要とする時間を確保できるような
配慮をしなければなりません(義務規定)。
① 育児を行う者
② 老人等の介護を行う者
③ 職業訓練又は教育を受ける者
④ その他特別な配慮を要する者
(平成11年1月29日基発45号)
なお対象の制度は以下の通りです。
・1か月単位の変形労働時間制
・1年単位の変形労働時間制
・1週間単位の変形労働時間制
フレックスタイム制については、
労働者が始業、就業の時刻を決めることができるため
この「特別な配慮」を要する制度には含まれていません。
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ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
1か月単位の変形労働時間制ですが、
必ず「1か月」で区切らなければならないのでしょうか。
【A.1】
1か月単位の変形労働時間制ですが、
「1か月以内の期間」で定めることが可能です。
そのため、2週間、4週間などの設定もできます。
なお、1か月超の期間で変形労働時間制を採用したい場合には
1年単位の変形労働時間制を採用することになります。
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【Q.2】
1年単位の変形労働時間制を採用する場合、
いろいろと制限があると聞きました。
どのような制限があるのでしょうか。
【A.2】
1年単位の変形労働時間制には以下のような制限があります。
(1)1日および1週間の所定労働時間の上限
1日10時間、1週52時間まで。
ただし、対象期間が3か月を超える場合には以下の要件あり。
① 所定労働時間が48時間を超える週が、4週連続しないこと
② 所定労働時間が48時間を越える週が、3か月以内に4週以上ないこと
(2)労働日数の上限
対象期間が3か月を超える場合は、
1年あたりの労働日数の上限は280日
(休日数は85日(うるう年86日)以上必要)
(3)連続労働日の日数
① 原則は6日
② 特定期間(特に繁忙となる時期としてあらかじめ
労使協定で定めた期間)については、
週に1日の休日が確保できる日数
(労使協定で定めれば、最大で12日の連続労働が可能)
☆ ☆ ☆
【Q.3】
フレックスタイム制を導入する際、
気をつけなければいけないことがあれば教えてください。
【A.3】
フレックスタイム制は、労働者に始業、終業の時刻をゆだねることから
何時に勤務を始めても、何時に勤務を終了してもよいことになります。
例えば真夜中に勤務する場合、22時~翌朝5時の時間帯は
深夜業の割増賃金の支払いが必要となります。
そのため、必ず勤務すべき時間帯である「コアタイム」を
設定するほうがよいでしょう。
昼間にコアタイムを設定しておけば、勤務がすべて深夜になる、
ということがなくなります。
労働者側の注意点としては、
清算期間内で実労働時間が所定労働時間に満たなかった場合、
不足した分は欠勤・遅刻扱いとなり給料が減額されるか、
次の清算期間に不足した労働時間がプラスとなり、総労働時間が増えます。

