vol.228 2026年4月からの労働・社会保険法改正

2026年4月から

労働・社会保険関係の改正がいくつか施行されます。
今回は法改正が確定しているものについて取り上げます。

なお改正が検討されている労働基準法については
法案が通った時点でその内容をお伝えいたします。

≪目次≫
2026年4月からの労働・社会保険関係法改正
在職老齢年金の支給停止基準額引上げ
□被扶養者認定に関する取扱いの変更
□子ども・子育て支援金の創設
男女間賃金差異・女性管理職比率の公表義務
□障害者法定雇用率引上げ
□社会保険加入時の賃金要件撤廃

□Q&A

 2026年4月からの労働・社会保険関係法改正一覧(確定

【4月】 
 ・厚生年金保険法
   在職老齢年金の支給停止基準額引上げ
 ・健康保険法
   被扶養者認定に関する取扱いの変更
 ・医療保険各法等
   子ども・子育て支援金の創設
 ・女性活躍推進法
   男女間賃金差異・女性管理職比率の公表義務
【7月】
 ・障害者雇用促進法
   障害者法定雇用率引上げ(2.5%→2.7%)
【10月】
 ・社会保険加入時の賃金要件撤廃(106万円の壁)

 在職老齢年金の支給停止基準額引上げ
   (2026年4月改正)

在職老齢年金制度とは、60歳以上で社会保険に加入している場合、
給与と年金の合計額に応じて老齢厚生年金の
一部または全額が支給停止される制度です。

支給停止基準額 = (賃金) + (老齢厚生年金)

【現 行】 51万円/月
   ↓
【改正後】 65万円/月

※2026年の改正後、賃金変動に応じて毎年変更されます
※老齢基礎年金はカットなしで受給できます

これにより、今まで年金の支給が停止されていた方や
労働時間を調整して年金が停止されないよう働いていた方が
労働時間や労働日数をこれまでほど気にせず
働くことができるようになります。

~厚生労働省 パンフレット 在職老齢年金制度改正~
https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001657296.pdf

 被扶養者認定に関する取扱いの変更
   (2026年4月)

被扶養者の収入が給与収入のみである場合には
「労働条件通知書」等の労働契約内容が分かる書類に
記載のある賃金を基準とし
認定決定を行うこととなりました。

【現行】
直近3か月分の給与明細書等で年間130万円を
超えていないことを確認
  ↓
【改正後】
労働条件通知書等で年間130万円を
超えていないことを確認

今までは、給与明細書のコピー等で金額を確認していたことから
残業代等も含めて収入要件をみていました。
4月からは、残業代等の時間外労働・深夜労働等に対する賃金は
含まれなくなります。
あくまで労働条件で定められた
所定労働に対する賃金額で計算するので、
扶養認定のハードルが実質的に下がることになります。

~日本年金機構 労働契約内容による年間収入が

       基準額未満である場合の被扶養者の認定について~
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2025/202512/1225.html

 子ども・子育て支援金の創設
  (2026年4月)

子ども・子育て支援金制度は、

少子化対策の財源を確保するため、

新たな負担金を
健康保険料(医療保険料)に上乗せして

徴収する新制度です。

こども・子育て支援金の徴収は、
2026年4月分の保険料(5月支給給与)から開始されます。
会社の社会保険に加入されている方は健康保険料から、
国民健康保険や後期高齢者医療保険に
加入されている方はその保険料と合わせて納付することになります。
全制度平均は月額250円~450円です。

~こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度の創設 パンフレット~
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2013c0c1-d5f0-4555-920d-80d9428893be/a42ed1d6/20240904_policies_kodomokosodateshienkin_08.pdf

 男女間賃金差異・女性管理職比率の公表義務の拡大
  (2026年4月)

「男女間の賃金格差の状況」と

「女性管理職の割合」についての公表が
これまでより小規模な事業所にも義務付けらます。

【現 行】従業員数301人以上の会社
    ↓
【改正後】従業員数101人以上の会社

~厚生労働省 パンフレット~
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001620180.pdf

 障害者法定雇用率引上げ
  (2026年7月)

企業は従業員のうち一定以上の割合で
障がい者を雇用しなければならないと
法律で定められています。
これを「障害者法定雇用率」といいますが、
その率が7月より上がります。

【現 行】2.5% (従業員40人のうち1人) 
    ↓
【改正後】2.7% (従業員37.5人のうち1人)

 社会保険加入時の賃金要件撤廃
  (2026年10月)

社会保険の適用拡大により、
社会保険に加入している被保険者数が
51人以上の会社に勤務している場合、
下記の要件のパート・アルバイトの方も
社会保険に加入する義務があります。

【現 行】
・①週の所定労働時間が20時間以上
・②月額賃金が88,000円以上(年収換算で約106万円)
・③雇用期間が2ヶ月を超える見込み
・④学生ではない
  ↓
【改正後】①、③、④ (②を撤廃)

②の「月額賃金が88,000円以上(年収換算で約106万円)」が
10月より撤廃されます。
この改正により、

週の所定労働時間が20時間以上の従業員(昼間学生を除く)は、

原則として全員が社会保険の加入対象となります。

~厚労省 社会保険の加入対象の拡大について~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
~厚労省 社会保険 適用拡大特設サイト~
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

 今後の法律改正 予定

(1)脱退一時金の見直し
     (2026年4月から3年以内に施行)

脱退一時金は、日本で一定期間働いた外国人が、
年金受給資格(原則10年)を満たさずに母国へ帰国した場合に
帰国後に日本年金機構に請求できる制度です。

【現行】
・支給対象期間上限 5年
・再入国許可保持者への支給あり
・社会保障協定締結国でも脱退一時金請求可能
  ↓
【改正後】
・支給対象期間上限 8年
・再入国許可保持者への支給なし
・社会保障協定締結国は脱退一時金か年金通算制度との選択が必要

現在、支給額の上限が「5年」のため
保険料を5年以上払っていたとしても
脱退一時金は最大で5年分しか請求できませんでしたが
これが8年に引き上げられます。
これは技能実習制度に代わり
今後創設される育成就労(3年)の後、
引き続き特定技能1号(5年)を取得する場合に
通算8年間社会保険に加入することが想定されるためです。

また、「再入国許可」を保持したまま出国した場合、
脱退一時金は支給されなくなります。
再度日本に入国して社会保険に加入する可能性がある、と
判断されるためです。
脱退一時金を請求したいがために
再入国許可なしで出国すると、
それまでの在留資格と在留期間が消滅するため、
次に来日する場合には
再度在留資格等の手続きが必要になります。

(2)社会保険適用拡大の要件の変更
   (2027年10月~2035年10月にかけて)

社会保険の適用拡大において、
適用対象となる事業所の従業員数要件が変更されます。

(現 在)   51人以上
2027年10月  36人以上
2029年10月  21人以上
2032年10月  11人以上
2035年10月  10人以下の会社も適用

(3)厚生年金保険料 標準報酬月額の段階的引上げ
   (2027年9月から2029年9月まで)

標準報酬月額の上限を65万円→75万円に引き上げます。

【現行】
上限 65万円
  ↓
【改正後】  上限
2027年9月  68万円
2028年9月  71万円
2029年9月  75万円

これにより、これまで
1か月の給与・報酬が665,000円以上の方は
一律で65万円として保険料を計算していましたが、
3年かけて75万円まで上限が引き上げられます。
厚生年金の保険料は、
被保険者と事業主とで折半負担しているため
労働者の保険料だけでなく、会社の経費負担額も増えます。

~厚生労働省 標準報酬月額の上限の段階的引き上げについて~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00024.html

(4)カスハラ対策の義務化
    (2026年12月10日までに施行)

事業主に対し、カスタマーハラスメント対策を
講じることが義務付けられました。
具体的には
相談窓口の設置や研修の実施などが必要となります。

~厚生労働省 
 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
及び職業生活の充実等に関する法律等の
一部を改正する法律の概要~
https://www.mhlw.go.jp/content/001502748.pdf

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   ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
在職老齢年金の支給停止基準額引上げられるということは、
今まで以上に給与をもらっても、
年金額がカットされない、という理解でよいでしょうか。
またカットされる計算式を教えてください。

【A.1】
その通りです。
在職老齢年金は、社会保険に加入している
60歳以上の方が対象となります。
現時点で
「年金 基本月額※1」+「総報酬月額相当額※2)」が
  51万円以下・・・・・・・・年金額カットなし
  51万円を超える・・・・・年金額カットあり

年金カット額
=1か月の厚生年金の額+1か月の給与額から51万円を引いた額の2分の1
計算式:基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2

※1基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
※2総報酬月額相当額
月給・賞与(直近1年間の賞与の1/12)

となる仕組みです。
この「51万円」が4月より65万円に上がることから
今まで以上に働いても年金カットにならない可能性があります。

☆     ☆     ☆

【Q.2】
現在、社会保険加入者が55名の会社で働いています。
1週間20時間、時給1,050円、1か月の給与額が84,000円のため
社会保険に加入していませんが、
2026年9月から「会社の社会保険に加入することになります」
と人事担当者から連絡がありました。
配偶者の社会保険上の被扶養者になっていますが、
9月からは被扶養者を外れないといけないのでしょうか。

【A.2】
社会保険の被保険者数が51人以上の会社に
お勤めのパートの方が、週20時間以上勤務していても
月額賃金が88,000円未満の方は
これまでは社会保険の被保険者となりませんでした。
(いわゆる年収の壁106万円)

しかしこの「月額賃金が88,000円以上」という要件が
2026年9月に撤廃されることにより、
週20時間以上勤務されている方は賃金額に関係なく
会社の社会保険に加入することになります。

そのため、今まで配偶者やご家族の社会保険上の
被扶養者だった方であっても、勤務先の
社会保険に加入することが優先となるため
被扶養者から外れて、お勤めの会社の社会保険に加入しなければなりません。
労働者も会社側も保険料の負担が発生しますので
週20時間前後で働いている対象者がいる場合には
あらかじめ社会保険に加入する旨を伝えて、
今後、どのような働き方をするのか、確認しておきましょう。