vol.225 教育訓練休暇給付金の新設~育成と定着で人材不足に備える

雇用保険の被保険者が
厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し
修了した場合に雇用保険から
教育訓練給付金が支給されます。

さらに、その教育訓練給付を受講するため
被保険者が自発的に休暇を取得した際に
新制度として「教育訓練休暇給付金」が
雇用保険より支給されることになりました。

従業員がリスキリングを行う間の賃金保障を雇用保険で補うことで、

会社の持ち出しなく従業員のスキルアップが図れることになります。

ただし、この制度を利用するためには
会社側は事前に就業規則等を改定して
教育訓練休暇の制度設定をしなくてはなりません。
また、教育訓練休暇給付金を受給した者は
失業給付等が一定期間受給できなくなる場合があります。
申請の際にはその点を事前に確認する必要があります。

今回は教育訓練給付金と
新設された教育訓練『休暇』給付金について確認します。

■ 教育訓練給付金とは

今回新設された「教育訓練休暇給付金」は
雇用保険法における「教育訓練給付金」の要件と
ほぼ同じ教育訓練等を受講する必要がありますので、
まずは「教育訓練給付金」について確認していきます。

教育訓練給付金は、
一定の受給要件を満たす労働者が
厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講・修了した場合に、
その費用の一部が労働者に直接支給されるものです。

●対象者・要件
・雇用保険に加入している方で被保険者期間が1年以上
・現在の会社での雇用保険被保険者期間が1年未満であっても
 前職より離職してから1年未満であり、合算すると1年以上となる
・今までに教育訓練給付金を受給したことがない
・教育訓練給付金を受給したことがあるが、
 下記の2点いずれにも該当している
・前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上ある
・前回の支給日から今回の受講開始日までに3年以上経過している

●種類
給付金の対象となる教育訓練は、
専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の
3種類があります。

(1)専門実践教育訓練
  最大で受講費用の80%(年間上限64万円)
 ・業務独占資格などの取得を目標とする講座
  介護福祉士、看護師・准看護師、美容師、社会福祉士、
  歯科衛生士、保育士、調理師、精神保健福祉士、はり師 など
 ・デジタル関係の講座
  第四次産業革命スキル習得講座(経済産業大臣認定)
  ITSSレベル3以上の情報通信技術関係資格の取得を
  目標とする講座
 ・大学院・大学・短期大学・高等専門学校の課程
  専門職大学院の課程及び外国の大学院の経営管理に
  関する学位課程(法科大学院、教職大学院、MBA など)
  職業実践力育成プログラム(文部科学大臣認定) など
 ・専門学校の過程
  職業実践専門課程(文部科学大臣認定)
  キャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定

(2)特定一般教育訓練
  最大で受講費用の50%(上限25万円)
 ・業務独占資格などの取得を目標とする講座
  介護支援専門員実務研修、介護職員初任者研修、
  特定行為研修、大型自動車第一種・第二種免許 など
 ・デジタル関係の講座
  ITSSレベル2の情報通信技術関係資格の取得を
  目標とする講座
 ・大学等、専門学校の課程
  短時間の職業実践力育成プログラム(文部科学大臣認定)
  短時間のキャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定)

(3) 一般教育訓練
  受講費用の20%(上限10万円)
 ・資格の取得を目標とする講座
  輸送・機械運転関係(大型自動車、建設機械運転等)、
  介護福祉士実務者養成研修、介護職員初任者研修、税理士、
  社会保険労務士、Webクリエイター、CAD利用技術者試験、
  TOEIC、簿記検定、宅地建物取引士 など
 ・大学院などの課程
  修士・博士の学位などの取得を目標とする課程

なお、同じような内容であっても
教育訓練給付金の対象講座ではないことがあります。
給付金を活用してスキルアップを目指したい場合は
厚生労働省より検索システムがでていますので
そちらで該当講座か確認をしてください。

~厚生労働省 教育訓練給付制度 検索システム~
https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/

■ 教育訓練休暇給付金とは
労働者が離職することなく教育訓練に専念するため
自発的に休暇を取得して仕事から離れ賃金が支払われない場合に
雇用保険から失業給付(基本手当)に相当する給付として
賃金の一定割合を支払うものです。
生活費の保障をすることでスキルアップ(リスキリング)の
後押しをすることを目的としています。

●要件
①就業規則等に定められた教育訓練休暇制度に基づく
 休暇を取得したこと
②労働者本人が教育訓練を受講するために
 「自発的」に休暇を取得すること
③事業主の承認を得て「30日以上」休暇を取得すること
④休暇は「無給」であること
⑤厚生労働省で指定されている講座を受講するための休暇であること
  ・学校教育法で定める大学、大学院、短大、高専、専修学校
   または各種学校が提供する教育訓練等
  ・教育訓練休暇給付金の指定講座を有する法人等が
   提供する教育訓練等
  ・職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの

●対象者
雇用保険の一般被保険者であり、
次の2つをすべて満たすことが必要です。
 ①休暇前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
 (原則、1か月に11日以上の賃金支払い基礎日数があること)
 ②休暇前に5年以上の被保険者期間があること

ただし、
前職より離職してから1年未満かつ
離職中に基本手当(いわゆる失業保険)を受給していないのであれば
①、②の前後を通算することができます。

●受給期間 
休暇開始から1年間で、受給期間中に教育訓練を受講し
休暇と取得した日が対象期間となります。

●給付日数
給付額は給付日数によって決まり
加入していた雇用保険の加入期間に応じて異なります。

 加入期間 5年以上10年未満   90日
      10年以上20年未満  120日
      20年以上      150日

給付額は以下のように計算されます。
①「離職日の直前6ヵ月に
  毎月支払われていた賃金の総額÷180」で賃金日額を算出
②「賃金日額×45~80%」で基本手当日額を算出
    (賃金日額と年齢によって率が決定)
③「基本手当日額×給付日数」で受給金額の総額を算出

これにより、1か月の賃金額の約50~80%程度の額になります。

■ 教育訓練休暇給付金を受給するための会社側の準備事項

労働者が教育訓練休暇給付金を受給するために

会社側が事前に準備しておかなくてはならないことがあります。

(1)就業規則の整備
  教育訓練休暇給付金は、
  雇用保険の一般被保険者が、就業規則や労働協約、
  これらに準ずるものに定められた制度に基づき
  自発的に教育訓練休暇を取得した場合に支給されます。

  そのため就業規則等により「教育訓練休暇」の
  条項を追記する必要があります。

  なお有給にしてしまうと
  教育訓練休暇給付金が受給できないため
  一般的には「無給」と規定します。

(2)取得確認票のひな形作成
  教育訓練休暇を申請および会社が承認する
  書類のひな形を新たに作成します。
  ひな形は会社任意のもので結構ですが

  以下の項目を盛り込んでください。
  ・教育訓練の期間
  ・目標
  ・内容
  ・訓練施設および講座名称
 なお、
(1)就業規則の教育訓練休暇がわかるページ と
(2)教育訓練休暇取得確認票 は、
教育訓練給付金を

申請する際に必要な添付書類となりますので、

早めに作成しておきましょう。

■ 教育訓練休暇給付金の手続き
教育訓練休暇給付金の手続きは会社側が行う必要があります。
その流れを確認していきます。

(1)教育訓練休暇確認票の提出
  教育訓練休暇を希望する労働者は、
  会社に「教育訓練休暇確認票」を提出します。
  そのうえで会社は書類を受理し承認をします。

(2)ハローワークへ賃金月額証明書等を提出
  会社は労働者が休暇取得から10日以内に
  ハローワークへ「賃金月額証明書等」を提出します。
  これにより、受給できる金額を確定させます。

(3)教育訓練休暇給付金の申請
  会社は、休暇開始から30日を経過するごとに
  申請書をハローワークに提出。
  認定された場合は、労働者本人の口座に支払われます。

■ 必要書類
教育訓練休暇給付金の手続きにおいて
用意が必要な書類は下記のものになります。

【会社】
 ・休暇制度が規定されている就業規則の写し
 ・教育訓練休暇確認票の写し
 ・労働者の出勤簿やタイムカード(原則1年間分)
 ・労働者の賃金台帳(原則6か月分)

【労働者】
 ・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
 ・通帳やキャッシュカードのコピー
 ・教育訓練を受講していることを証明する書類
 (受講証明書、領収書等)

■ 注意点
教育訓練休暇給付金の受給において
注意すべき点をあげておきます。

・解雇を予定している労働者は教育訓練休暇を
 取得させることはできません。
 そのため「教育訓練給付金」も受給できません。

・会社側で就業規則等により
 「教育訓練休暇」の制度がないと受給できません。

・教育訓練休暇給付金を受給した場合、
 離職の際に受給できる「失業給付」の支給対象外となり
 休暇期間中のみで12ヶ月の被保険者期間を満たさないと、
 失業手当を受け取れない可能性があります。
 ※ ただし休暇後、事業の倒産、縮小、廃止、解雇等において
  離職する者は、休暇開始前における
  被保険者期間も含めることとなります。

・教育訓練休暇は労働者の「自主的」な休暇に限られます。
 会社が業務命令として休暇を取得させた場合には
 支給されません。

・不正受給があった場合には、
 不正に受給した額の返還に加えて
 2倍の金額の納付を命じられ、さらに
 詐欺罪として刑罰に処せられることがあります。

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   ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
教育訓練休暇給付金を受給した場合
他の雇用保険の給付は受給できなくなるのでしょうか。

【A.1】
教育訓練休暇給付金を受給した場合
休暇開始より前の被保険者期間は、なかったこととされるため
一定期間は失業給付等の被保険者期間を要件する
給付が受給できなくなりますので、ご注意ください。

☆     ☆     ☆

【Q.2】
教育訓練休暇給付金を受給した後に
介護・育児休業給付金を受給したい場合
被保険者期間がリセットされていることから
受給できなくなるのでしょうか。

【A.2】
特例として、育児・介護休業等給付について、
みなし被保険者期間を計算する場合、
教育訓練休暇給付金の支給を受けたことがあるときであっても、
休暇開始日前の被保険者期間を含めることができるよう
認められています。
そのため、教育訓練休暇給付金を受給した後
育児や介護休業給付に該当するときは
受給可能な場合があります。