vol.233 改正 同一労働同一賃金
~施行まであと半月、企業・事業主は早急に準備を~
2026年10月から「同一労働同一賃金ガイドライン等」が
改正されます。
これは正社員と非正規雇用(パート・アルバイト、
有期労働契約者、派遣社員等)との間の
不合理な待遇差をなくすことを目指しています。
今回の改定により
労働条件通知書の明示事項の追加、賃金の項目ごとの整理等
会社側が対応しなければならない事項が出てきます。
今回は、改正部分を中心に
同一労働同一賃金ガイドラインの内容と
会社側の対応事項を確認していきます。
--≪目次≫-------
■ Q&A
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■ 同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、同一会社・団体における
正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者) と
非正規雇用労働者
(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者 等)
との間の不合理な待遇差を解消しようという考え方です。
今回の「同一労働同一賃金ガイドライン」での
不合理な待遇差とは、賃金だけでなく
福利厚生や教育訓練等も含まれます。
また賃金部分においても
賞与や退職手当、皆勤手当や住宅手当など
手当ごとに細かく記載されています。
■ 改正内容および会社側が対応すべき事項
今回の同一労働同一賃金の改正は
以下の3つの告示・指針見直しから構成されています。
罰則は規定されていませんが、
対応不十分の場合は労使トラブルや
企業評価低下のリスクがあります。
1.雇入れ時の労働条件通知書の項目追加
2.同一労働同一賃金ガイドラインの改正
3.雇用管理改善措置内容の改正
こちらを1つずつ確認していきます。
(1)雇入れ時の労働条件通知書の項目追加
2026年10月1日以降に
パート・有期雇用労働者を雇い入れる際は、
「正社員との待遇差の内容や理由について
説明を求めることができる」旨を、
書面で明示する必要があります。
●労働条件通知書 追加部分の記載事例
(その他の欄)
次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違
(内容・理由)、雇用管理の改善等について
説明を求めることができる。
○○部○○課 担当者 ○○課長 ○○○○ (連絡先 )
また、相談等があった場合にその内容を
労働者に説明しなければなりません。
●待遇の相違
・通常の労働者との待遇の相違の内容
・その待遇の相違を設けている理由z
●雇用管理の改善
・賃金をどのような基準で決定しているか
・どのような教育訓練を実施しているか
・どの福利厚生施設を利用できるか
・正社員への転換を推進するため、どのような措置を設けているか
同一労働同一賃金ガイドラインでは
正社員とパート労働者等との間で
「待遇差があってはならない」、とは言っておらず、
「なぜ違いがあるのか」の説明をすることが重要と伝えています。
・職務内容が異なる
・責任の範囲が異なる
・配置転換(転勤等含む)の有無が異なる
具体的には
・正社員は、業務時間外のトラブル対応、クレーム処理、
欠員時の緊急対応など、職務の範囲を超えた包括的な
対応義務を負っている
・有期雇用従業員は、契約で定められた範囲内の業務のみを行い、
緊急時の呼び出しや残業対応の義務を負っていない
といった合理的な理由があれば
相違がある場合でもその相違に見合った
バランスのとれた待遇差にとどめる「均衡待遇」である、
とされる可能性が高くなります。
なお対象となる労働者は
・短時間労働者(パートタイマー、アルバイト等)
・有期雇用労働者
・派遣労働者 です。
(2)同一労働同一賃金ガイドラインの改正
今回のガイドラインの改正は「新ルール導入」ではなく
ハマキョウレックス事件やメトロコマース事件等の
すでに確定している裁判例や実務を踏まえ明文化し、
公正な待遇への取り組みをさらに進めることを目的としています。
特に次のような待遇について、
会社は支給・不支給の理由を説明できることが重要になります。
・基本給 ・賞与 ・家族手当 ・住宅手当
・食事手当 ・病気休職 ・慶弔休暇 など
「正社員だから支給」「パートだから支給しない」という
説明だけでは不十分と考えられ、待遇差がある場合には
その目的や役割の違いを合理的に説明できることが求められます。
待遇に関して、厚生労働省より
具体例が指針として出ているので、
それをもとに確認するとよいでしょう。
以下にもいくつか例示しますので参考にしてください。
(〇問題になりにくい例)
(×問題となりやすい例)
【基本給】
〇総合職(転勤あり・幅広い業務)と、
限定正社員・パート(転勤なし・定型業務)で
基本給に差をつける
〇能力評価や職務遂行能力に応じて基本給テーブルを設定し、
同じ雇用区分内でも能力等級により差をつける
×正社員が有期雇用労働者より多くの経験を有することを理由に、
より高い基本給を支給しているが、
正社員のこれまでの経験は現在の業務に関連が無い
【賞与】
〇責任や役割が大きく異なるため支給額に差をつける
×正社員と同様に働くパートに賞与を支給しない
【家族手当】
〇契約更新せず、短期間の契約に留まる契約社員に支給しない
×契約更新を繰り返し長期雇用が見込まれる契約社員に
有期契約を理由として支給しない
【住宅手当】
〇転勤がある正社員に支給し転勤のない契約社員には支給しない
×正社員にのみ住宅手当を支給しているが
【食事手当】
〇食事休憩がある正社員に食事手当を支給し
食事休憩がないパートには支給しない
×食事休憩がある労働者に支給する食事手当の金額が
正社員に高くパートに少なく設定されている
【病気休職】
〇契約期間に応じて休職期間を設定する
×更新を繰り返している有期雇用者に病気休職を認めない
【慶弔休暇】
〇正社員には慶弔休暇を付与しているが
週2日の勤務の短時間労働者には
勤務日の振替での対応を基本としつつ、
振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与している
×更新を繰り返している有期雇用者に慶弔休暇を認めない
~厚生労働省
「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する
不合理な待遇の禁止等に関する指針(令和8年改正版)」~
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001696696.pdf
(3)雇用管理改善措置内容の改正
「短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置」に
関する指針の見直しであり、
ガイドラインの改正内容を雇用管理面にも反映したものです。
①パートタイム・有期雇用労働者にも
職業能力開発法の適用があることへの留意
雇用する労働者に必要な職業訓練を行うとともに、
労働者が自ら教育訓練等を受ける機会を確保するために
必要な援助等を行うよう努めなければならない
②公正な評価に基づいた賃金の決定
職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験
その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、
昇給に反映する等、
公正な評価に基づき決定することが望ましいことに留意
③パートタイム・有期雇用労働者の過半数を
代表する者の要件等についての留意
就業規則の作成・変更を行う際には、
法第7条に基づき、各事業所において雇用する
パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者
の意見を聴くように努めなければならない。 等
■ 正社員登用制度の活用
その他会社が行っておくことが望ましい取組として
「非正規雇用から正社員への登用制度」を
導入、整備、運用していること、が挙げられます。
正社員登用制度の存在は、
正社員と非正規の職務内容の差があることを表しているからです。
今回の改正内容に影響を及ぼした裁判例として、
大阪医科薬科大学事件ではアルバイト職員の賞与が、
メトロコマース事件では契約社員の退職金が争われ、
どちらも原告に支給する必要は無いという判断になりました。
これはどちらも正社員登用制度があり、
実際に運用され、過去に正社員に登用された実績があり、
原告に関しては、正社員の1段階前への登用試験を受験するも、
失敗して諦めていたという経緯があったことが
不支給の判断理由の一部とされました。
●正社員登用制度における運用注意点
1.正社員登用試験についての目的は明確に定めておく
2.登用試験についての受験募集案内は毎回確実に行う
3.採用の際に、労働条件通知書に
正社員登用試験についての文章を入れておく
4.受験資格を満たしても目的などに照らして
不合格になることがあることを、あらかじめ案内しておく
『改正内容および会社の対応事項』の欄でも記したように、
労働条件通知書の追記事項がありますので
正社員登用制度を運用する会社は
「正社員登用制度あり」の内容も追記しておくとよいでしょう。
■ 10月までに会社が行うべきこと
施行は2026年10月ですが
今のうちに社内で待遇差などがないかどうか確認し
必要であれば書面等を変更する必要があります。
(1)正社員と非正規雇用労働者の待遇差の洗い出し
正社員と非正規雇用労働者
(パート・有期雇用労働者・派遣労働者)の
雇用形態・職務内容・配置変更範囲を確認しましょう。
職務内容や配置変更範囲等は
正社員と非正規雇用労働者がどのように違うのか、
それにより賃金形態が区別されているのかどうか、等です。
給与などに係る手当の内容も確認が必要です。
今回ガイドラインで具体的にあがっている
住宅手当や家族手当等に待遇差がないかどうか
また死傷病の休職制度や永年勤続の報奨制度等も
非正規雇用労働者も対象とすべきとされているため
現時点でどうなっているのか確認が必要です。
(2)待遇差の理由を説明できるようにする
正社員とそれ以外の方に待遇差がある場合には
その内容を説明できるようにしておきます。
前項1.で洗い出した
「職務の責任度合いはどのくらいか」
「転勤や配置転換はあるのか」等により
住宅手当や賞与などの支給・不支給や
計算方法が違う、等
労働者に説明できるようにしておきます。
(3)必要に応じて就業規則等を変更する
正社員と非正規雇用労働者と待遇差があり
今回のガイドラインに抵触する場合には
就業規則等の変更が必要です。
(4)労働条件通知書の改定
2026年10月以降に非正規雇用労働者を雇入れる場合や
契約更新がある場合には
労働条件通知書の改定が必要です。
~厚生労働省 リーフレット
パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります~
https://www.mhlw.go.jp/content/001698010.pdf
~厚生労働省 リーフレット
同一労働同一賃金ガイドラインの内容~
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001696752.pdf
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ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
賃金の待遇差の説明を求められました。
どのように説明すればよいでしょうか。
【A.1】
本文にも書きましたが、
「正社員だから」「パートだから」のみの
説明では不十分です。
例えば 正社員の基本給は、
「担当業務の範囲、責任の程度、
将来的な配置転換・職務変更の可能性、人事評価、トラブル対応、
売上等の目標値設定、経験年数等を踏まえて月給制で決定しています。
一方、パートの時給は、
「担当する業務内容、勤務時間、勤務日数、経験、
能力等を踏まえて決定しています。」
という具合です。
説明に整合性がないといけませんので、
正社員とそれ以外の方の役割等を
明確にしておく必要があります。
☆ ☆ ☆
【Q.2】
定年後、再雇用制度を使って
1年の有期契約で65歳まで働いてもらっています。
この場合でも、今回の同一労働同一賃金ガイドラインの
適用となるのでしょうか。
【A.2】
定年再雇用においても
同一労働同一賃金は適用とされ
「定年再雇用だから」という理由だけで
待遇差を設けることはできません。
ただし、賃金を引き下げること自体は
禁止されているわけではありません。
例えば、
・管理職から一般職になる
・配置転換がない
・責任度合いが軽くなる
・判断権限が少なくなる、もしくはなくなる
等の事情を総合的に考慮して、
待遇差に合理性があれば認められる可能性があります。
定年再雇用後に給与額を下げる場合には
待遇差の説明ができるようにしておきましょう。
