vol.226 男女雇用機会均等法から考えるセクハラと間接差別
ハラスメント対策が必須になった現在、
社内の相談窓口の設置や研修会などを開催している会社も
多いことでしょう。
そのうちセクシャルハラスメントが最初に出てきた
ハラスメントの1つであり、
今では「セクハラはダメ」というのが認知されています。
今回はそのセクハラ防止対策の法律である
男女雇用機会均等法や男女差別について確認していきます。
≪目次≫
■ 男女雇用機会均等法とは
■ 男女雇用機会均等法の変革
■ 男女雇用機会均等法の概要
■ 男女雇用機会均等法違反とならない事例
■ 間接差別とは
■ 事業主の講ずべき措置等
■ 男女雇用機会均等法の裁判事例
■ 男女雇用機会均等法とは ■
男女雇用機会均等法とは、
「雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保」
を図ることなどを目的とした法律です。
会社に雇用されて働く労働者が、
性別を理由にして差別を受けることがないよう
制定されました。
また女性労働者の就業に関して、
妊娠中・出産後の健康確保措置等を推進すること、
も大きな目的です。
こういったことからセクハラが起こらないよう
時代ともに改正を行い、現在の形になってきました。
■ 男女雇用機会均等法の変革 ■
この法律は、社会の性別役割分担意識が
変化していったことに合わせ何度か改正が行われてきました。
<1986年>
男女雇用機会均等法施行
・募集・採用、配置・昇進につき、
女性を男性と均等に取り扱う努力義務
・教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇につき、
女性に対する差別的取り扱いの禁止 等
<1999年>
・募集・採用、配置・昇進につき、
女性を男性と均等に取り扱う努力義務が義務化
・事業主に対するセクハラ防止措置の義務化
・母性健康管理措置の義務化 等
<2007年>
・差別規定の強化、間接差別の禁止の導入
・妊娠、出産等を理由とした不利益取り扱いを禁止 等
<2020年>
・不利益取扱いの禁止
・セクハラ防止の啓発活動とセクハラに
必要な注意を払うべき努力義務 等
初期は一般的な男女差別の禁止が制定され
その後、出産育児に関する差別の禁止、
近年はセクハラ禁止やその相談者の
不利益変更の禁止等が中心になってきています。
■ 男女雇用機会均等法の概要 ■
ここからは、男女雇用機会均等法の概要
および労働基準法における関連規程について
確認していきます。
●男女雇用機会均等法
(1)性別を理由とする差別の禁止
・募集、採用、配置、昇進降格、教育訓練、
一定範囲の福利厚生、職種や雇用形態の変更、退職の勧奨、
定年、解雇、労働契約の更新について、
性別を理由とする差別を禁止
・労働者の募集や採用について、
身長、体重、体力に関する事由を要件とする差別を禁止
・労働者の募集や採用、昇進や職種の変更について、
住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを
要件とする差別を禁止
(2)婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止
・婚姻を理由とする解雇を禁止
・妊娠、出産、産休取得、その他厚生労働省令で定める
理由による解雇その他不利益取扱いを禁止
(3) セクシュアルハラスメント 及び
妊娠・出産等に関するハラスメント対策
・職場におけるセクシュアルハラスメント防止のために、
雇用管理上必要な措置を事業主に義務付け
①ハラスメント防止方針の明確化・周知・啓発
②ハラスメントに関する相談・対応体制の整備
③ハラスメント発生時の迅速・適切な対応
④その他のハラスメント防止に関する措置や取り組み
(4) 母性健康管理措置
・妊娠中・出産後の女性労働者が保健指導、
健康診査を受けるための時間の確保、
当該指導又は診査に基づく指導事項を守ることが
できるようにするため必要な措置を講ずる
(5) 男女雇用機会均等推進者の選任
・事業主は、職場における男女の均等な機会及び
待遇の確保が図られるようにするために
講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための
業務を担当する者として、
男女雇用機会均等推進者を選任するよう努めなければならない
●労働基準法における性差別、出産・育児関連規程(4、64~68条)
(1)男女同一賃金の原則
賃金について、女性であることを理由とした
男性との差別的取扱いを禁止
(2)妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限
妊産婦を妊娠、出産、哺育などに有害な一定の業務に
就かせることを制限
(3)産前産後休業等
産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内の休業について
女性が請求した場合及び
産後8週間については原則として就業を制限
(4)妊産婦に対する変形労働時間制の適用及び
時間外・休日労働、深夜業の制限
(5)育児時間
生後満1年に達しない生児を育てる女性は、
1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することが可能
(6)生理日の就業が困難な女性に対する措置
生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、
生理日の就業を制限
女性への差別に目が行きがちですが、
男性への差別も禁止されていますので注意しましょう。
例えば、女性のみ採用する、
昇進にあたっての条件を男女で異なるものとする、
女性のみ社宅を提供する、等が挙げられます。
■ 男女雇用機会均等法違反とならない事例 ■
一部の職種、職務によっては
法違反とはならないと
厚生労働省で事例をあげているものがあります。
① 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から
男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
② 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から
男性に従事させることが必要である職務
③ ①及び②に掲げるもののほか、
宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上
その他の業務の性質上
男女のいずれかのみに従事させることについて
これらと同程度の必要性があると認められる職務
また、8条「女性労働者についての措置に関する特例」として
以下の場合には法違反にならないとされています。
・女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない
雇用管理区分における募集若しくは採用又は役職についての
募集若しくは採用に当たって、当該募集又は
採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること
・女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない
職務に新たに労働者を配置する場合に、
当該配置の資格についての試験の受験を
女性労働者のみに奨励すること
■ 間接差別とは ■
間接差別とは、
「一見すると性別に関係がないような基準・ルールであっても、
運用の結果、どちらかの性別に不利益が生じており、
その状況を合理的に説明できないこと」を意味します。
<例>
・募集や採用にあたり、職務に関係がない身長や体重などを設け
その正当性が疑われる場合
・全国転勤を総合職の採用や昇進要件にあげたため
女性の採用や昇進が相当程度少なくなったが、
その条件の正当性が認められない場合
・給与手当の支給に関し、
住民票上の世帯主を対象とすることを要件にしたため、
女性の適用者の割合が男性に比べ相当程度少なくなった場合で、
これに正当性が認められない場合
身長や体重は女性のほうが小さく軽く不利になる場面が多いこと、
全国転勤や総合職、住民票の世帯主は男性が多く
女性が対象になる場面が少ないこと、等が
間接差別に当たると考えられています。
■ 事業主の講ずべき措置等 ■
会社は、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関する
ハラスメントなどのトが生じないよう事前に対策を講じることや、
ハラスメントが生じた場合は迅速かつ適切に対応することが
義務付けられています
(1)職場におけるセクシュアルハラスメント対策
会社は、職場において行われる性的な言動に対する
その雇用する労働者の対応により
当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、
又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が
害されることのないよう、
当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために
必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を
講じなければならない。
(2)職場における妊娠・出産等に関するハラスメント対策
会社は、職場において行われるその雇用する女性労働者に
対する当該女性労働者が妊娠したこと、
出産したこと、産前産後、育児休業をしたこと
その他の妊娠又は出産に関する事由であって
当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、
当該女性労働者からの相談に応じ、
適切に対応するために必要な体制の整備
その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(3)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
職場におけるハラスメントの内容及び職場における
ハラスメントを行ってはならない旨の
事業主の方針等を明確化し、管理監督者を含む労働者に
周知・啓発すること。
(4)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談への対応のための窓口( 対面・電話・メール等による
相談窓口)をあらかじめ定めること。
労働者と会社の間で起こるトラブルは
「会社側が対応してくれなかった」
「相談しても回答がなかった」等、会社が講ずべき措置を
怠ったことによるものが大多数です。
■ 男女雇用機会均等法の裁判事例 ■
性別差別による判例を確認していきます。
●AGCグリーンテック事件:東京高裁 R6.5.13 労働者勝訴
総合職のみ家賃補助があり、
その総合職はほぼ男性だったことを
男女差別だとした女性労働者の訴えが
間接差別にあたる、と初めて認められた判例です。
【事件のあらまし】
ほぼ全員が男性である総合職には
賃料の8割を負担する借り上げ社宅制度があり、
ほぼ全員が女性である一般職には
社宅制度の利用を認めず2011年当時で
月額3,000円の住宅手当しか支給しないことは
「雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという
均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当する」として
一般職の女性労働者が訴えを起こした。
【判決】間接差別と認める
会社側は、総合職にのみ社宅制度が適用される理由として、
「転勤のある営業職(総合職)の採用競争における
優位性の確保」をあげていましたが
実態では転勤の有無にかかわらず、
社宅制度が総合職に適用されていたことを鑑みると
補助制度の利用を総合職に限ることは
「事実上男性にのみ適用される福利厚生で、
女性に相当程度の不利益を与えていることに合理的理由はない」
と認定しました。
さらに、こうした運用を続けることは男女雇用機会均等法の
「間接差別」に該当するとしました。
●ジャパンビジネスラボ事件:東京高裁 R1.11.28 労働者敗訴
労働者(原告)が、会社(被告)に対し、
育児休業後に有期労働契約への変更がなされ、
その後に、雇止めが行われたことは、
無効であるなどと主張して、雇用契約上の地位を有することの確認
および不法行為に基づく損害賠償請求を求めたが
雇止め有効と認められた判例です。
【事件のあらまし】
正社員契約を締結していたが、
Xが育児休業終了後も保育園は決まらず、
週5日勤務の復帰ができなかった。
そこで、XとY社代表者等との間で面談を実施し、
①正社員として従前と同様の勤務
②正社員としての時短勤務
③契約社員への変更 の
3つの選択肢があることを説明し、
契約期間を1年間とした週3日勤務の契約社員として
会社と再契約を交わすこととなった。
その1週間後、保育園入所が決まったため
Xは正社員への変更を求めたがYは応じず
1年後の契約期間満了で退職となった。
【主な争点】
①契約社員契約の際の合意の解釈及び有効性
②本件契約社員契約の更新の有無
③損害賠償責任
【判決】解雇有効
YとXとが取り交わした雇用契約書の記載から、
雇用形態のうち、「契約社員(1年更新)」が選択され、
Xは契約社員として期間を1年更新とする有期労働契約を
締結したものであるから、これにより、
正社員契約を解約したものと認められ、
労働者の自由な意思に基づいてしたものと認めるに足りる
合理的な理由が客観的に存在するものといえる。
Xが正社員への復帰を希望することを停止条件とする
無期労働契約の締結を含むものではなく、
契約社員が正社員に戻ることを希望した場合に、
速やかに正社員に復帰させる合意があったとはいえない。
以上のことから、
雇止めは客観的に合理的な理由を有し社会通念上相当であり、
契約社員契約が期間満了により
終了したとしてXの請求を棄却し、雇止め有効としました。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここが知りたい! Q&A
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【Q.1】
荷物を運搬するため体力を必要とする仕事の募集に当たり、
体力に自信がある者という要件をとしようと思います。
これは問題あるのでしょうか。
【A.1】
業務の遂行上、特に必要であるといった合理的な理由がなければ、
法違反となります。
体力を要件とする場合、具体的な数値までは必要ありませんが、
「~を持てること」「~を登れること」等の
具体的なものであることが必要です。
「体力に自信があること」といった抽象的なものは
体力を要件としていることにはなりませんので注意してください。
☆ ☆ ☆
【Q.2】
産前産後、育児休業明けの労働者を職場復帰させる際、
休職前の職場(原職)に復帰させないといけないのでしょうか。
【A.2】
原則は、原職同様の職場、もしくは原職相当職に
復帰させることになっています。
「原職相当職」の範囲については、
個々の企業または事業所における組織の状況、業務の配分、
その他の雇用管理の状況によってさまざまですが、一般的に、
(イ)休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと
(ロ)休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと
(ハ)休業前と休業後とで勤務する事業所が同一であること
のいずれにも該当する場合には「原職相当職」と評価されます。
なお、(イ)から(ハ)までの全てに該当しなければ
「原職相当職」には該当しないというものではなく、
例えば、販売職の者が、(イ)及び(ロ)の条件を満たした上で、
通勤事情の変化に伴い経済的または精神的な不利益を
特段生じない別店舗(例えば自宅からより近い店舗)へ
復帰する場合など、
個々の企業の状況によってはいずれかが欠けている場合であっても、
原職相当職と考えられる場合もあります。
