vol.227 無断欠勤者の対応 ~ 放置厳禁、まずは状況把握から
昨日まで普通通りに働いていた労働者が
次の日から出勤せず、連絡も取れなくなってしまった、
という場合に、会社としてどのような対応をすべきか
悩むケースがあります。
また最近では労働者本人からではなく
「退職代行」といった業者を使って
退職の意思を伝えるケースがみられます。
今回は無断欠勤者の対応と
退職代行から連絡があった場合に
どのように進めていけばよいかを確認していきます。
--≪目次≫----------
□ 無断欠勤の主な理由
□ 無断欠勤者の対応
□ 無断欠勤者の退職扱い
□ 無断欠勤者を解雇する場合の注意点
□ 無断欠勤者の給与
□ 退職代行とは
■ 無断欠勤の主な理由 ■
労働者がやむを得ず欠勤する場合、通常は
その旨の連絡が会社に入ります。が、
連絡の無いまま出勤しない、
いわゆる「無断欠勤」をする労働者がいる場合、
その理由はどのようなものでしょうか。
代表的な理由として、以下のようなことが挙げられます。
- 寝坊などの単純な連絡ミス
寝坊して起きられず始業時刻を過ぎてしまった、
遅刻しそうなことが恥ずかしくて連絡できなかった等
単純なミスによる遅刻の事実を隠すため
連絡せずに欠勤するパターンです。 - 自宅もしくは出勤途中で事件や事故にあっている
単身者が自宅で事件に巻き込まれている、
出勤途中に交通事故に遭遇し連絡が取れないこともあります。
特に一人暮らしの従業員は自宅で倒れているケースがあるので
注意が必要です。 - 精神疾患の影響
朝決まった時間に起きられない、
会社に行こうとすると体調が悪くなる等の場合、
精神疾患の影響が考えられます。
こうしたケースでは連絡するタイミングを逃しやすく、
結果として無断欠勤になることが少なくありません。 - 出社したくない理由がある
会社でセクハラやパワハラを受けていて、
恐怖心から会社に行けない場合も無断欠勤になりがちです。 - 退職したいが言えずにいる
退職を希望する労働者が、申し出や手続きを面倒に感じて
無断欠勤するケースです。
退職理由を聞かれる、退職届の提出をしたくない、
退職を引き留められること等を嫌がり
出勤しないことが考えられます。
■ 無断欠勤者の対応 ■
それまで元気に勤務して遅刻もなかった労働者が
ある日突然連絡なく出社しなくなったら、
会社としては疑問や戸惑いを感じるでしょう。
その場合、会社としてどのような手順で
無断欠勤者の対応をしなければならないのでしょうか。
一定の手順に沿って状況確認をしていくことが重要です。
具体的に確認しましょう。
- 労働者本人と連絡を取る努力をする
まずは労働者に連絡をとり、現在の状況を確認します。
電話やメール、SNS等、通常業務で使用している連絡手段で
連絡を試みます。
電話やメール等で連絡がついた場合には、
どうして出勤しないのか、
連絡しなかった理由が体調不良や急な事情によるものかなど、
状況の把握に重点を置きましょう。
まずは事実の確定をすることが重要ですので、
いきなり責任の追及や結論には触れないようにしましょう。
労働者の状況が把握できたら、
その内容に合わせて説明を行いましょう。
「欠勤の際は必ず連絡をしてほしい」こと、
「連絡がないと事故等安否が心配である」こと
「体調不良であればその旨の連絡をしてもらわないと
無断欠勤となってしまう」こと、等です。
状況把握の段階で、退職希望や就労の困難さについて
本人から申し出があれば対応します。
退職の意思がある場合は退職届を提出してもらいましょう。
2. 電話連絡等に応じない場合
無断欠勤をしている労働者の中には、
会社と話をしたくない、と思っていて、
連絡に応じないケースが多々あります。
しかし無断欠勤者の対応を放置しておくことは
よくありません。
通勤途中で事故にあってしまった、
自宅で倒れていた、等のケースも考えられるためです。
本人と連絡が取れない場合は、
家族など身元保証人に連絡をして、
労働者が無断で欠勤をしており心配している、
家族から確認を取ってもらいたい旨を伝えましょう。
そのうえで、どのような状況か会社に連絡をしてくれるよう
家族に伝えてください。
家族がすぐに対応できない場合は、
会社側が複数人で労働者の自宅へ出向き、
安否の確認を取ることも必要です。
「自宅まで行き、確認する必要があるのでしょうか」
と言われることがありますが、
上記のように自宅で倒れている可能性もあります。
自宅へ出向き、労働者が在宅していれば話をし、
不在であれば手紙等を入れておく、
在宅している様子があるにもかかわらず、
呼び鈴を押しても応答がない場合は、管理人や警察の
立ち合いのもとで状況確認することも検討します。
あわせて、会社に来なくなった労働者に
手紙を送付することも考えます。
必ず受け取りを確認できる内容証明や
レターパックプラス等で送ります。なぜなら
普通郵便で送ると郵便受けに投函されることになり、
本人の手元に届いたか、ひいては安否を確認することができないためです。
また、必ず1.2.で連絡を取った記録を
簡潔なものでよいので書面で残しておきます。
(日付、時間、連絡手段、連絡がとれたかどうか、等)
以後の対応・手続きにおいて会社を守るための証拠材料となります。
■ 無断欠勤者の退職扱い ■
前述のような対応をしても連絡が取れない場合、
この労働者を退職扱いにできるのでしょうか。
無断欠勤者への連絡を十分に試みたにも関わらず、
一向に連絡を取ることができない場合には、
会社は、当該労働者との労働契約(雇用関係)を
終了せざるを得ないことになります。
【就業規則に基づく自然退職】
会社は、あらかじめ就業規則に定めることにより
労働者の無断欠勤(音信不通・行方不明)など、
一定の要件に該当したことをもって、
例:「行方不明となり、〇か月以上連絡が取れないときは
自然退職とする」
このような条文があれば、
就業規則上の要件に該当するため
労働契約を解約することが可能になり、
解雇ではなく自己都合退職と同じ扱いになります。
【解雇】
労働者から退職の意思表示(退職願の提出など)がなされず、
就業規則に自然退職の条項がない場合は
会社から労働契約を終了させるための手段として、
やむを得ず解雇することが考えられます。
しかし解雇は労働契約法16条で、
「客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されており
解雇のハードルは高いです。
なお無断欠勤をした日数が何日程度続けば
「客観的合理的理由」なるかについて明確な基準はありません。
この点については、行政通達および判例により、
懲戒解雇に相当する「労働者の責めに帰すべき事由」として、
「原則として2週間以上、正当な理由なく無断欠勤し、
出勤の督促に応じない場合」が挙げられていることから、
2週間がひとつの目安になるといえます。
(労働基準法第20条第1項、昭和23年11月11日基発1637号、
東京地方裁判所平成12年10月27日判決など)
対応の結果、無断欠勤者を解雇する場合には
解雇通知書を交付しますが、必ず「内容証明郵便」で送ります。
なぜなら、解雇通知を送っても届かず返送された等、
解雇通知を相手が受け取ったことを証明できない場合は、
裁判所にて解雇は成立しておらず
雇用関係が続いているものと扱われてしまうためです。
■ 無断欠勤者を解雇する場合の注意点 ■
前述の要件に当てはまったことにより退職また解雇をする場合
下記の点に注意しなければなりません。
1. 無断欠勤の事実を証明する証拠が必要
・タイムカードや出勤簿等
↑欠勤等勤怠の状況が確認できる書類
・会社側が無断欠勤者に連絡をとった記録
↑「連絡がない欠勤であること」の証拠
2. 会社側に原因がある場合や精神疾患がある場合は解雇できない
無断欠勤であっても、会社側に原因がある
パワハラや長時間労働に該当している場合には
解雇することができません。
これは、会社にハラスメントや過重労働等を防ぎ、
労働者の心身の安全を守るべき義務があるため、
無断欠勤をすべて従業員の責任とするのは適切でない
と判断されるためです。
また、うつ病など精神疾患が理由だった場合も、
無断欠勤の扱いで解雇すると不当解雇となるリスクがあります。
メンタルヘルス不調の従業員については、
まず休職させて治療に専念させることが望ましいでしょう。
3. 細心の注意を払い適切な手順をとる
対応を誤り適切な手順で解雇しなかった場合、
不当解雇とみなされる会社にペナルティが課される可能性があります。
無断欠勤した際、会社側が連絡をしていたか、
自宅まで確認をしたか、解雇する前に通知をしたか、
等、適切な手順で解雇したかどうかが問われます。
■ 無断欠勤者の給与 ■
無断欠勤が続いている場合でも、
出勤した日分の給料は労働者に支払わなければなりません。
(労働基準法第24条)
一般的には毎月の給与を振り込みにしている会社が多いと思いますが、
給与を「手渡し」することにより、本人の来社を促すことを考えます。
文書やメールなど、記録の残る形で
「賃金は支払うこと」「受け取りに来てほしいこと」を伝えます。
すでに退職の意思が示されている場合は
合わせて「退職届と貸与物等の持参」も伝えましょう。
連絡をしても当該労働者が給与を受けとりに来ない場合は、
いつでも支払いが可能な状態で社内で給与を保管しておき
給料支払日から3年経過しても、
労働者が給与を受け取りに来なければ、
賃金の消滅時効を援用することにより給与支払い債務が消滅します。
■ その他無断欠勤者の手続き ■
給与の支払い以外にも退職に関する手続きがあります。
通常の退職と同様になります。
○雇用保険の資格喪失
雇用保険に加入していた労働者は
雇用保険の資格喪失手続きが必要です。
就業規則に「自然退職」の項目があれば「退職」、
なければ「解雇」になるため、就業規則(の記載)の有無により
退職理由は変わってきます。
○社会保険の資格喪失
社会保険に加入していた労働者は
社会保険の資格喪失手続きが必要です。
資格確認書を発行している
人については喪失届に添付する必要がありますが、
連絡がとれず回収が難しい場合には、
喪失届と一緒に「回収不能届」を提出しましょう。
マイナ保険証を利用している労働者は
資格喪失届のみの提出で問題ありません。
○退職金の扱い
退職金の支払いについては、会社の就業規則に従うのが基本です。
無断欠勤等でやむを得ず退職扱いになった者の
退職金を減額・不支給にする場合は、
あらかじめ就業規則に定めておきます。
例:「無断退職した場合、退職金の一部又は全部を支給しない」
○その他(貸与品の回収、私物の返却)
会社側が貸与しているパソコン、携帯電話、
名刺、事務用品等は資格確認書と同様に返却してもらうよう
伝えましょう。
労働者と連絡がつかない場合や、一向に返却してくれない場合、
内容証明郵便を送る等も必要です。
特にパソコンや携帯電話等、個人情報を含むものは
返却されないと会社に大きな影響を及ぼす可能性があります。
その場合、本人や身元保証人への損害賠償請求も
検討すべきでしょう。
会社に置いてある私物については、
無断で処分すると、不法行為にあたり
退職者から損害賠償請求されるおそれがあります。
「〇月〇日までに取りに来てください」
「〇月〇日までに引き取りに来ない場合は、自宅に送付します」
と文書で通知し、それでも返答がない場合は、
退職者の自宅に私物を郵送してください。
■ 退職代行とは ■
退職代行とは、退職したいと考えている労働者の代わりに
第三者が職場に退職の意思を伝える行為のことです。
労働者が退職の意思を会社側に伝えづらいときに
近年退職代行業者を利用する人が増えてきています。
退職代行業者を使い、労働者が退職の意思を伝えてきた場合には、
以下のポイントに沿って適切に手続きを進めます。
1. 代行業者の資格を確認する
退職代行する窓口は、
①弁護士、②労働組合、③その他民間業者の
3つに分かれます。
①弁護士と②労働組合には
会社との交渉を行う法的な権利(①代理権②団体交渉権)があります。
そのため、労働者が弁護士か労働組合が運営している
退職代行サービスを使われた使ったのであれば、
会社は以後業者とやり取りをすることになります。
一方、③民間の退職代行業者は
①②のような権利がないので
退職に関する交渉や意思決定に関する確認、
取り決めなどを行うことは違法となります。
会社としては退職の意思を受け止める以外は、
原則として本人と直接進めなければなりません。
なので、民間業者とのやり取りにおいては
より慎重な対応が必要です。
どのタイプの代行業者なのか、まずは確認しましょう。
2. 労働者本人の依頼か確認する
本当に当該労働者による依頼かどうか確認しましょう。
非常にまれなことですが、
第三者による嫌がらせ目的のなりすましが考えられるからです。
労働者本人の依頼であれば、
本人の依頼を示す委任状や労働者本人の身分証明書等を
代行業者が持っているはずですので、
それらの書類について提示を求めれば
労働者本人からの依頼かどうか確認することができます。
3. 労働者の契約内容や希望する退職日を確認する
無期雇用の場合は退職希望日の確認をしましょう。
一方、有期雇用の場合は、
基本的に契約期間が満了するまでは退職を拒否することが可能です。
ただし、民法および労働契契約法にて
「やむを得ない事由があるときは、
各当事者は直ちに契約の解除をすることができる」
とされていますので、有期契約であっても
中途退職が認められるケースがあります。
(民法628条、労働契約法17条)
「やむを得ない事由」についての法的な定義はありませんが、
病気や出産・育児、介護、パワハラ、賃金未払いなどが
該当すると考えられています。
4. 労働者に退職届の送付を依頼する
まだ退職届が提出されていない場合には、
書面で退職届を提出してもらう必要があります。
5. 退職届の受理、貸与品の返却等を依頼する
従業員に貸与していたパソコンや携帯電話等があれば、
返却を依頼しましょう。
基本的には通常の自己都合退職と同じような扱いになります。
①~③のどの業者を利用したとしても、
退職代行業者を通じて退職の意思表示がされた場合、
その意思が本人のものである限り、会社は原則として拒否できません。
また、退職代行を使うということは、労働者本人はすでに
会社に対する前向きな意思はない、と考えられます。
そのため退職を拒んだり引き止めたりしても復帰の見込みは少なく、
仮に復帰したとしてもモチベーションが下がった状態では、
良いパフォーマンスは期待できません。
本人の復帰を考えるよりも、退職への手続きを粛々と、
速やかに進めるほうがよいでしょう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここが知りたい! Q&A
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【Q.1】
無断欠勤を繰り返す労働者がいるのですが、
どのような対応をすればよいでしょうか。
【A.1】
無断欠勤常習者に対しては
就業規則があれば懲戒処分を科すことが可能です。
無断欠勤により、会社に迷惑がかかることはもとより、
周りの労働者のモラルにも影響してきます。
無断欠勤常習者には会社側から書面で指導し、
その指導が何度も続く場合には、懲戒処分を行います。
就業規則がない場合懲戒処分はおこなうことができません。
そのためにも就業規則を作成し、無断欠勤を行った場合の
処分について明記しておきましょう。
☆ ☆ ☆
【Q.2】
退職代行サービス業者から、対象者の退職についての
連絡があった場合、
会社側から労働者本人へ連絡をとってはいけないのでしょうか。
【A.2】
退職代行サービスを通して退職の連絡がある場合、
労働者本人への連絡を禁止する旨を伝えられるケースが多いです。
しかし、民間業者であれば法的に強制力はありませんので、
労働者へ連絡をとることも可能です。
ただし退職代行サービスを使ったということは、
退職希望者からの「会社と連絡を取る気はない」という
意思表示だと考えられるため、
適法に代理人が選任されている場合は、
代理人を通して交渉を進めるほうが無難です。
