vol.219 休日と休暇
労働者が仕事を休むものに「休日」と「休暇」がありますが
はっきりした違いを認識したことはありますか。
実は違いがあり、就業規則などにも
どの日やどのような場合が休みになるのか
明示する必要があります。
今回は、休日と休暇、また休業との違いと、
勤怠や賃金の発生有無の関係について確認していきます。
■ 休日と休暇の違い
休日は、もともと労働義務のない日(非労働日)として
設定されるのが「休日」であるのに対し
休暇は、労働日であるにもかかわらず
労働義務が免除される日を「休暇」、という違いがあります。
■ 休日に関する法律
労働基準法第 35 条では
「原則として毎週少なくとも1回の休日を与える義務がある」
としています。
この週1回の休日を「法定休日」といい
法定休日を与えなかった場合は
罰則として、6ヵ月以下の懲役または 30万円以下の罰金が
設けられています。
なお法律上の要件は、1週間に最低1回とされているだけであり、
毎週一定の曜日を休日とする必要はありません。
会社によっては休日が週2回の会社も多いことでしょう。
そのような週に複数の休日がある場合は
以下の2つの種類に分類することができます。
・法定休日:法律で定められた休日
・所定休日:会社が任意で設定する休日
週休1日の会社では法定休日のみを与えていることになり、
週休2日の企業では法定休日を1日、所定休日を1日
与えているということになります。
法定休日と所定休日は、割増賃金の計算が違ってきますので
注意が必要です。
また、原則休日には労働の義務がないため、
会社は労働者に休日労働を強制することはできません。
■ 休暇に関する法律
休暇とは、労働日であるにもかかわらず
労働義務が免除される日をいいます。
休暇には、一定の要件を満たした場合に、
法律上必ず付与しなければならない「法定休暇」と、
就業規則や労働協約に基づき、
使用者が任意に付与する「法定外休暇」の2種類があります。
「法定休暇」は労働基準法にて定められており、
年次有給休暇、産前産後休業、育児介護休業等があります。
「法定外休暇」としては慶弔休暇や夏季休暇等があげられます。
そして、休暇に関する規定は、
必ず就業規則に記載しなければならない「絶対的記載事項」
とされているため、必ず記載して労働者に明示しなければなりません。
これは法定休暇だけでなく、法定外休暇についても
記載が必要となります。
労働者を10人以上雇用する事業主は
就業規則の作成義務がありますが、
10人未満の事業主であっても、
労働基準法第15条第1項では
「使用者は、労働契約の締結に際し、
労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を
明示しなければならない。」と規定されていることから
労働条件通知書等で、休日や休暇について明示が必要となります。
(労基法施行規則第5条第4項)
なお、賃金については
法定休暇のうち年次有給休暇は、「有給」と
定められていますが、
それ以外の法定休暇および法定外休暇については、
有給でも無給であってもかまいません。
法定休暇の産前産後、育児介護休業等の
一部の法定休暇においては
無給だった場合で要件を満たす被保険者に
健康保険や雇用保険から経済的な支援を
保険給付として支給しています。
休暇の種類によって有給であるのか、無給であるのかは
就業規則等に記載しておきましょう。
■ 法定の休暇の種類
法定の休暇について、その種類や要件を確認していきます。
(1) 年次有給休暇
労働基準法第39条で定められているものです。
勤続年数によって付与される日数が決められています。
正社員だけでなく、パートやアルバイトの労働者についても
要件をクリアしていれば、法律上当然に付与されます。
○要件
・雇用した日から6か月間継続して雇用されていること
・全所定労働日の8割以上出勤していること
要件のうち2つ目の「8割以上出勤していること」とは
出勤日÷全労働日 で計算されます。
出勤日数には、休日出勤した日は除き、遅刻・早退した日は含めます。
また全労働日、出勤日は下記のように取り扱われます。
★全労働日から除外される日数
・使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
・正当なストライキその他の正当な争議行為により
労務が全くなされなかった日
・休日労働させた日
・就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日
☆出勤したものと取り扱う日数
・業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
・産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日
・育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日
・年次有給休暇を取得した日
(2) 産前産後休業
女性労働者の母体保護のための法定休暇です。
原則として以下の場合は就業不可とされています。
・産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に
出産する予定の女性が請求した場合
・産後8週間
産前の6週間は出産予定の女性労働者が希望した場合で
医師の許可がある場合には、休業しなくても
よいとされています。
社会保険に加入している方が産前産後休業を取得し、
その間、無給である場合は健康保険より「出産手当金」が
支給されます。
(3) 育児休業
子が出生した日から子の1歳の誕生日の前日までの間で
(一定の要件により、2歳まで延長可能)、
労働者が申し出た期間は休業させなければなりません。
なお、雇用保険に加入している方が育児休業を取得し、
その間無給である場合は、
雇用保険より「育児休業給付金」が支給されます。
育児休業は性別にかかわらず取得することが可能です。
(4) 育児時間
生後満1歳に達しない子を養育している
女性労働者が請求した場合には、
休憩時間のほか1日2回各々30分の休憩を付与
しなければなりません。
これは授乳のための時間を確保するためのものです。
(5) 生理休暇
生理日の就業が困難な女性労働者が休暇を請求したときは、
その者を生理日に就業させてはいけません。
(6) 子の看護休暇
小学校就学前の子を養育する労働者が申し出たときは、
1年度において5日(2人以上の場合は10日)
休業させなければなりません。
(7) 介護休業
対象家族1人につき3回まで、
通算して93日を限度として、
労働者が申し出た期間において休業させる必要があります。
なお、雇用保険に加入している方が介護休業を取得し、
その間無給である場合は、
雇用保険より「介護休業給付金」が支給されます。
(8) 介護休暇
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が申し出たときは、
1年度において5日(2人以上の場合は10日)
休業させなければなりません。
(9) 公民権行使の保障
労働者から
①公民権を行使するため、または
②公の職務を執行するために必要な時間を請求された場合に、
拒否することを禁止しています。
選挙権や被選挙権の行使、裁判員制度に参加する際の休暇に
あたります。
ただし、権利行使や公務の執行に妨げがない場合に限って、
請求された時刻を変更することは認められます。
■ 休日出勤の割増賃金の計算
休日に労働者を勤務させた場合、
休日労働の名目での割増賃金の支払いが必要となるのは、
「法定休日」が対象となり、3割5分以上の
割増賃金率が適用されます。
「所定休日」の労働では休日労働の割増賃金は発生しませんが、
時間外労働等として割増賃金が適用される可能性があります。
所定休日に出勤した場合、
その労働時間は法定労働時間に合算されるため、
法定労働時間(1週間40時間)を超過した分には、
法定時間外労働として通常の賃金の2割5分以上の
割増賃金を支払う必要があります。
【例】従業員Aの労働条件
:月~金 1日 7時間勤務
所定休日 土曜日 法定休日 日曜日 の場合
(1)月~金 7時間勤務
土曜日 7時間勤務(休日出勤)の場合
7時間×5日=35時間
土曜日 5時間×1.0 + 2時間×1.25
※土曜日の勤務のうち、
はじめの5時間分までは週40時間内のため1.0で計算
(2)月~金 7時間勤務
日曜日 7時間勤務(法定休日出勤)の場合
7時間×5日=35時間
日曜日 7時間×1.35
※日曜日は法定休日のためすべて1.35で計算
同じ「休日」であっても、
「法定休日」かそうでないかで、割増賃金の計算が違ってきますので
給与計算担当者は注意が必要です。
なお振替休日や代休を取る場合、通常勤務分は相殺されるため、
別途支給するのは、
法定休日:1時間ごとの所定賃金×0.35
所定休日:1時間ごとの所定賃金×0.25
の割増賃金部分のみです。
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ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
夏休みや年末年始休みを労働者に取らせていますが、
これは休日、休暇のどちらになるのでしょうか。
【A.1】
就業規則を確認し、夏休みや年末年始休みが
「休日」になっているかどうかを確認してください。
「休日」の欄に記載があれば、休日となりますし、
記載がなければ労働者が自由に取得している「休暇」に該当します。
休日ではなく、労働の義務がない「休暇」の設定にしたい、
というのであれば、
年次有給休暇の計画付与を活用してみましょう。
計画付与とは、年次有給休暇のうち年5日間を除いた日において
会社側が休暇の日を割り振ることができる制度です。
休日以外の日に会社ごと休みにしたい、部署ごとに休みにしたい、
という場合に使うことができます。
夏休みや年末年始休み、
5月の連休に何日かつけて1週間すべて休みにする、
等が考えられます。
夏休みなどを計画付与にすることにより、
年次有給休暇の取得の促進にもなりますし、
会社内や部署内で休みやすい環境を作ることが可能となります。
なお計画付与は、就業規則の整備や労使協定の締結が必要となります。
年次有給休暇取得促進特設サイト
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/
☆ ☆ ☆
【Q.2】
法定以外の休暇を設定する場合、
注意点があれば教えてください。
【A.2】
法定以外の休暇は、慶弔休暇やリフレッシュ休暇、夏季休暇、
資格取得休暇、ボランティア休暇などを
設定している会社が多いようです。
・全従業員に適用かどうか
・取得する際の申請方法
・取得可能な日数
このような点を就業規則に記載しておくべきでしょう。
正社員だけでなくアルバイトやパートの方にも適用するのかどうか、
申請する際には添付書類が必要か、
忌引きなどの場合は、亡くなられた家族が慶弔休暇の対象となっているか、
何日間取得できるのか、等を具体的に記載します。
また重要な点としては、有給か無給かの確認も必要です。
一般的には、有給として休んだ場合であっても賃金を支払っている
会社が多いようですが、
「休むことはよいが、給与は支払わない」という場合も
まれにあるようです。
法定外の休暇は会社が内容を独自に定めることができるため
取得条件や取得日数などを明確にし、就業規則に記載しておきましょう。