vol.210 雇用保険 離職票

雇用保険制度は、労働者が失業した場合や
育児や介護で休業した場合に、必要な給付を行うものです。
特に失業した場合に離職票発行手続きを行い
退職した労働者に離職票を渡すことにより、
雇用保険の基本手当を受給することができます。

今回は、労働者から会社へ質問が多い
離職票の発行と基本手当の受給について確認します。

 雇用保険の加入者要件

最初に、雇用保険に加入すべき労働者の条件を確認します。

(一般被保険者の場合)

・31日以上雇用の見込があること
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・昼間学生ではないこと

なお、学生が会社から内定をもらい、
卒業前からその会社で勤務をスタートさせ、
引き続き同じ企業で勤務を続けることが明らかである場合には
雇用保険加入の対象になります。

上記の条件に該当する労働者がいる場合には
雇用保険に加入する手続きを行います。

 退職した場合の会社の手続き

退職をした場合、会社はその労働者の退職手続きが必要です。

・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届
・雇用保険 被保険者資格喪失届
      離職証明書

健康保険厚生年金保険は、日本年金機構へ、
雇用保険はハローワークへ提出します。
ハローワークでの手続きが終了すると、
会社経由で 労働者へ送付する「離職票1.2.」と
会社控えの「資格喪失確認通知書」「離職証明書」が
戻ってきます。

退職した方は、会社から送られてきた
「離職票1.2.」をもって、自身がお住いの
管轄のハローワークへ行き、失業の手続きをします。

 基本手当を受給できる条件

雇用保険に加入していた退職労働者が
離職票1.2.を受け取り
管轄のハローワークに出向いて失業の認定を受けることで
基本手当を受給できるようになります。

<基本手当の受給要件>
(1)失業の状態であること
失業の状態とは、
「就職しようとする意思といつでも就職できる
能力があるにもかかわらず、
職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にある」
ことです。

そのため、下記のような状態の場合には
基本手当を受給することはできません。

・家業や家事の手伝いをしている
・学業に専念することになった
・すでに次の就職先が決まっており、転職活動をする予定がない
・自営業を始めた(準備を含む)

この場合には、今後の就業の意思がない、
または次の職業に就くことが決まっており、
失業状態とはいえません。

また、
・病気・ケガ・妊娠・出産・育児などのためすぐに働けない
・介護などのためにすぐに働けない
等である場合には、
ハローワークに受給期間延長手続きを行えば、
働ける環境が整ったあとで給付を受けられます。

(2)離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あること

退職する前の2年間に、雇用保険に12か月以上加入して
賃金を支払っていることが条件となります。

ただし、自己都合や定年退職以外の
会社都合による退職や契約期間の満了で
労働者が更新を希望したにもかかわらず更新されなかった場合など
特定受給資格者や特定理由離職者に該当した場合は
離職の日以前1年間に、被保険者期間が
通算して6か月以上ある場合でも可となります。

なお被保険者期間とは、
雇用保険の被保険者であった期間のうち、
離職日から1か月ごとに区切っていた期間に
賃金支払いの基礎となった日数が11日以上
又は賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月を
1か月と計算します。

(3)ハローワークに「休職の申し込み」をしていること

退職した労働者の住所を管轄するハローワークへ行き、
離職票1.2.を提出するとともに、求職の申し込みをすることが
必要となります。

 支給額、支給される期間

雇用保険で受給できる1日当たりの金額を
「基本手当日額」といいます。
この「基本手当日額」は原則として
離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計を
180で割って算出した金額のおよそ50~80%
(60歳~64歳については45~80%)となっており、
賃金の低い方ほど高い率となっています。

支給される期間(給付日数)に基本手当日額をかけた金額が
支給金額の総額になります。
退職事由が自己都合か会社都合か、
雇用保険に何年間加入していたか等により
給付日数は、変わってきます。

自己都合
 10年未満       90日
 10年以上20年未満  120日
 20年以上       150日

会社都合等
 年齢や被保険者期間により、90日~330日

65歳以上で退職
 1年未満        30日
 1年以上        50日

 受給までの流れ

住所地のハローワークへ出向き、
失業の手続きをしたからといって、
すぐに基本手当を受給できるわけではありません。
会社都合等で離職した場合には、約1か月
自己都合で離職した場合には、約3~4か月後に
受給(振込がされる)ことになります。

求職の申し込みと受給決定
  ハローワークへ出向き、求職の申し込みをします
  このとき、離職票1.2.やマイナンバーカード等の書類が必要です
  必要書類は、「退職された皆様へ」の冊子を参照
    ↓
説明会
  ハローワークが開催する説明会に出席
    ↓
待期期間
  求職の申し込みをした後、7日間は待期の期間となります
    ↓
給付制限がある場合には給付制限期間(2~3か月)
  自己都合で退職した場合には、給付制限期間があり
  その期間は支給されません
    ↓
失業の認定
  4週間に1回、失業の認定をハローワークで受けます
  失業の認定を受ける期間には、求職活動の実績が必要です
    ↓
基本手当の支払い
  失業の認定を受けた日数分の支払いが行われる
    ↓
その後、4週間に1回、失業の認定
    ↓
就職、もしくは受給満了により終了
 受給期間前に就職が決まった場合で、
 支給残日数が3分の1以上ある場合には
 基本手当にかえて「再就職手当」が支給されます

受給するには、「就職する意思があること」が必要なため
面接を月に数回受けるなど、求職活動をしていることが
必要となります。

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   ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
失業中にアルバイトをしても、
雇用保険の基本手当は受給できるのでしょうか。

【A.1】
基本手当を受給する場合、
最初の待期期間の7日間は働くことはできません。

給付制限期間中は、働くことが可能です。
ただし雇用保険に加入する、週20時間以上で31日以上働くことが
見込まれるようなアルバイトをすると、雇用保険に加入することになり、
基本手当の受給が今後できません。

基本手当受給中は、失業保険の受給中も、アルバイトは認められています。
アルバイトをする場合には、失業認定日に提出する失業認定申告書で、
アルバイトをした旨を申告する必要があります。
この申告を怠ってしまうと、
失業保険の不正受給として罰則が適用されてしまう危険性があるので、
注意が必要です。

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【Q.2】
離職票が不要な場合は、どのような時でしょうか。

【A.2】
離職票は、労働者が退職する場合に
会社が役所へ交付手続きをして発行してもらうものです。
離職票が必要な場合は

・退職する労働者が希望している
・59歳以上の労働者が退職する

この場合には、離職票の手続きをします。
本人が希望する場合は当然手続きをしますが
退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無に関わらず、
離職証明書の手続きが必要です。
60歳以上64歳までの人が雇用される際の
賃金の低下分を補う「高年齢雇用継続給付」の手続きに
60歳時の賃金証明書である「離職票-2」が必要になるためです。

退職する労働者が次の転職先で雇用保険に加入することがわかっている場合は
「不要」といってくることがあります。
また、労働者が死亡した場合も、離職票は不要となります。

ただし雇用保険の資格喪失届の手続きは必須になります