vol.209 休憩時間

以前のメルマガでは、休日と休暇について説明しましたが、
休憩時間についても押さえておきたいポイントがいくつかあります。
また、「この時間は休憩時間か、労働時間か」などといった点も
お問い合わせが多い内容です。

働き方改革で労働安全衛生法が改正され、
2019年4月より「労働時間の客観的な把握」が義務化されたこともあり
休憩時間もきちんとした把握や管理が必要となってきています。

今回は、前半で休憩時間について、
後半のQ&Aで休日・休暇について
お問い合わせの多いケースを確認していきます。

 休憩時間とは

休憩は、労働基準法34条にて以下のように定められています。

① 使用者は、労働時間が
 6時間を超える場合においては少なくとも45分、
 8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を
 労働時間の途中に与えなければならない。

② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。
 ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する
 労働組合がある場合においてはその労働組合、
 労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては
 労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、
 この限りでない。
③ 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

休憩は、「労働者が権利として
労働から離れることを保障している時間」をいいます。
一方、労働時間は
「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」と定義されており
労働時間に該当するか否かは、客観的に見て使用者の指揮命令下に
おかれているかどうかにより判断されます。

また休憩時間中、労働者は労働から離れ
使用者の指揮命令下にはいないため、
休憩時間は労働時間に含みません。
したがって、使用者は休憩にあてられた時間に対して
賃金を支払う義務もありません。

 休憩時間の注意すべきポイント

休憩時間に関し、使用者が注意すべきポイントがありますので
そのポイントを見ていきます。

① 労働時間の途中に休憩を与える
 休憩は、労働の途中に与える、とされています。
 出勤前や退社後に休憩を与えることはできず、
 遅刻や早退を休憩に代替することはできません。

② 休憩時間の自由利用
 休憩時間は、自由に利用することができ
 労働から完全に開放されていることが必要です。

③ 原則、休憩は一斉に付与すること
 労働基準法第34条第2項では、
 休憩は労働者に対して一斉に与える必要がある旨が
 規定されています。

 たとえば、同じ部署に属する5人の従業員に順番に休憩を与える、
 といったことは違法行為になるのです。

 ただし、運輸交通業、商業、金融・広告業、
 映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、
 官公署の事業については一斉に付与しなくてもよい、とされています。
 また一斉付与適用事業であっても
 労使協定を締結することにより、
 交代制で休憩を取らせることが可能となります。

④ 休憩時間の分割
 休憩時間は分割が可能です。
 1日60分の休憩がある場合、
 昼休憩として45分、午後3時のリフレッシュ休憩として15分、
 など分割して取得させることができます。

⑤ 休憩の適用除外
 下記の労働者については、
 労働基準法の休憩時間が適用されません。

 ・農林・畜産・養蚕・水産の事業に従事する労働者
  農林の事業(林業を除く)、
  または畜産・養蚕・水産の事業に従事する労働者
  (労働基準法41条1号)

 ・管理監督者
  経営者と一体的な地位にある労働者は、
  「監督もしくは管理の地位にある者」(いわゆる管理監督者)

  に該当します (労働基準法41条2号前段)

・機密の事務を取り扱う労働者
 経営者または管理監督者の活動と一体不可分な職務を行い、
 厳格な労働時間管理になじまない労働者
 (労働基準法41条2号後段)
 例えば、社長秘書などがこれに該当します。

・監視または断続的労働に従事する労働者で、
 使用者が行政官庁の許可を受けたもの
 監視業務に従事する労働者や、
 途切れ途切れに行われる業務に従事する労働者
 (労働基準法41条3号)
 例えば、警備員・守衛・マンションの管理人がこれに該当します。

 休憩時間とみなされない事例

労働時間か、休憩時間か、という判断は難しい場合があります。
使用者の指揮命令下にあるか、自由に利用できている時間か、
などで判断します。

休憩時間をどのように利用するかは、
労働者が完全に自由に決められなければなりません。

【休憩時間とみなされない事例】
① 昼食をとりながら電話当番をさせること
 昼休みと称して電話当番をさせた場合、
 労働から解放されていないため、
 休憩時間を付与していないことになります。

② ランチミーティングと称して業務の打ち合わせを行うこと
 ランチミーティングへの参加を強制している、
 または参加しないと従業員が評価や業務において
 不利益を受ける可能性があり、
 参加が事実上強制になっている場合は
 休憩時間ではなく労働時間に該当します。
 そのため、ランチミーティングに
 強制参加または実質的に強制参加させられる場合は
 別の時間に休憩時間を取らせるようにしましょう。

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   ここが知りたい! Q&A
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【Q.1】
夏休みや年末年始休みを労働者に取らせていますが、
これは休日、休暇のどちらになるのでしょうか。

【A.1】
就業規則を確認し、夏休みや年末年始休みが
「休日」になっているかどうかを確認してください。
「休日」の欄に記載があれば、休日となりますし、
記載がなければ労働者が自由に取得している「休暇」に該当します。

休日ではなく、労働の義務がない「休暇」の設定にしたい、
というのであれば、
年次有給休暇の計画付与を活用してみましょう。
計画付与とは、年次有給休暇のうち年5日間を除いた日において
会社側が休暇の日を割り振ることができる制度です。
休日以外の日に会社ごと休みにしたい、部署ごとに休みにしたい、
という場合に使うことができます。
夏休みや年末年始休日、5月の連休に

何日かつけて1週間すべて休みにする、
等が考えられます。

夏休みなどを計画付与にすることにより、
年次有給休暇の取得の促進にもなりますし、
会社内や部署内で休みやすい環境を作ることが可能となります。

なお計画付与は、就業規則の整備や労使協定の締結が必要となります。

年次有給休暇取得促進特設サイト
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuuka-sokushin/

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【Q.2】
法定以外の休暇を設定する場合、
注意点があれば教えてください。

【A.2】
法定以外の休暇としては、

慶弔休暇やリフレッシュ休暇、夏季休暇、
資格取得休暇、ボランティア休暇などを
設定している会社が多いようです。

・全従業員に適用かどうか
・取得する際の申請方法
・取得可能な日数

このような点を就業規則に記載しておくべきでしょう。
正社員だけでなくアルバイトやパートの方にも適用するのかどうか、
申請する際には添付書類が必要か、
忌引きなどの場合は、亡くなられた家族が慶弔休暇の対象となっているか、
何日間取得できるのか、等を具体的に記載します。

また重要な点としては、有給か無給かの確認も必要です。
一般的には、休んだ場合であっても賃金を支払っている
会社が多いようですが、
「休むことはよいか、給与は支払わない」という場合も
まれにあるようです。

法定休暇のうち
年次有給休暇の賃金については「有給」と定められていますが、
それ以外の法定休暇および法定外休暇については、
有給でも無給であってもどちらでもかまいません。
法定休暇の産前産後、育児介護休業等は
無給であっても要件に該当すれば
健康保険や雇用保険から経済的な支援として
保険給付が労働者に支給されます。

法定外の休暇は会社が内容を独自に定めることができるため
取得条件や取得日数などを明確にし、就業規則に記載しておきましょう。